2023年3月、英BBCが放送したドキュメンタリー番組をきっかけに、ジャニーズ事務所の創業者である故ジャニー喜多川氏による所属タレントへの性加害疑惑が国際的な注目を集めた。元所属タレントらが次々と被害を告発する中、同年5月には藤島ジュリー景子社長(当時)が動画で謝罪。同年7月から8月にかけては国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会も来日して調査を行った。

2023年8月、事務所が設置した外部専門家による再発防止特別チーム(座長・林眞琴元検事総長)は調査報告書を公表し、ジャニー氏による性加害は「紛れもない事実」と認定。長年にわたって事務所が性加害を放置し、メディアへの圧力によって報道を抑え込んできた構造的問題も指摘した。

2023年9月7日、ジャニーズ事務所は記者会見を開き、創業者の性加害を初めて認めて謝罪。藤島氏は代表取締役を退任した。同年10月には社名を「SMILE-UP.(スマイルアップ)」に変更し、被害者への救済・補償に専念する方針を表明。タレントのマネジメント業務は新会社「STARTO ENTERTAINMENT(スタートエンターテイメント)」に移管された。

問題は放送局にも波及した。NHKやテレビ朝日、TBSの社屋内で性被害に遭ったとの証言も報じられ、各局が社内調査の結果を公表する事態となった。また、ジャニーズ事務所が所属タレントのカレンダー出版権を出版社に配分する「カレンダー利権」を通じてスキャンダル報道を抑え込んできたとの指摘もなされ、メディアと芸能事務所の癒着構造が問われた。

SMILE-UP.による被害者への補償は今も続いており、申請者数や補償額をめぐっては賛否が分かれている。日本最大の芸能事務所を揺るがしたこの事件は、芸能界の権力構造と人権意識のあり方に根本的な問いを投げかけた。