旧ジャニーズ事務所の性加害問題をめぐる損害賠償訴訟で、東京地裁は2026年9月24日、原告の男性の請求を棄却する判決を言い渡した。訴えていたのは、元ジャニーズJr.だったと主張する男性で、1993年にオーディションに参加し、テレビ番組の収録を見学する形で活動に加わるようになった際、ジャニー喜多川氏にトイレに連れて行かれ性被害を受けたと主張していた。男性はSMILE-UP.に被害を申告したにもかかわらず対応を放置されたとして、900万円の損害賠償を求めていた。
中野琢郎裁判長は判決理由で、男性が番組の収録に参加していたとする主張を裏付ける客観的証拠はないと指摘。性加害があったことを示す証拠はないとしたうえで、SMILE-UP.が対応を放置したと評価することも困難だとして、男性の訴えを退けた。判決を受け、SMILE-UP.側は「当社の主張が裁判所に受け入れられたものと認識しております」とコメントした。
性加害の補償をめぐっては、申告者数が1000人を超える一方で、申告内容の真偽をめぐるトラブルも報じられてきた。SMILE-UP.は補償金の支払いをめぐって元タレントらを提訴するなど、補償業務の適正化にも乗り出している。今回の判決は、個別の訴訟において客観的な証拠の裏付けがなければ請求が認められないことを示した形だ。補償業務を続けるSMILE-UP.にとっては追い風となる判決だが、被害を訴える人々の中には「証拠が残りにくい性被害の特性が十分に考慮されていない」との不満もあり、補償の線引きをめぐる議論は今後も続きそうだ。
性加害をめぐる訴訟では、補償の対象から外れたと主張する人々による提訴も相次いでいる。SMILE-UP.側は「補償の枠組みとは別に、司法の場で争うことも被害者の権利だ」との立場を示す。一方で、虚偽の申告による補償金の不正受給も問題となり、同社は元タレントらへの提訴に踏み切った。補償と訴訟の二つの回路が並走する中、どこまでが救済されるべき被害なのかという線引きの難しさが改めて問われている。