「週刊文春」が報じた性加害疑惑をめぐり、ダウンタウンの松本人志が2024年1月に芸能活動を休止し、発行元の文藝春秋に約5億5000万円の損害賠償を求めて提訴した裁判は、同年11月に松本側が訴えを取り下げて終結した。活動再開の時期は見通せず、お笑い界の頂点にいた男の去就は今も注目を集めている。

発端は2023年12月27日発売の「週刊文春」の報道だった。同誌は2015年に東京都港区の高級ホテルで開かれた飲み会で、複数の女性が松本から性的行為を強制されたとする告発を掲載。後輩芸人が女性を集める「アテンド役」を務めていたとの証言も報じられ、大きな反響を呼んだ。松本側は「当該事実は一切ない」と全面否定し、所属する吉本興業も名誉毀損だとして法的措置を検討すると表明した。

その後も文春は続報を重ね、関係者への問い合わせが相次ぐ中で、2024年1月8日、吉本興業は松本が当面の間芸能活動を休止すると発表した。理由は「まずは様々な記事と対峙して、裁判に注力したい」との本人の申し出によるものだった。同年3月、松本側は文藝春秋を相手取り、約5億5000万円の損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こした。

裁判は長期化の様相を見せたが、2024年11月8日、松本側が訴えの取り下げを発表した。発表文では「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認した」「金銭の授受は一切ない」とする一方、「参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛められた方々がいらっしゃったのであれば、率直にお詫び申し上げます」と記された。取り下げには文春側の同意が必要で、文春側は被害を訴えた女性とも協議の上で応じたと説明した。

訴えの取り下げをめぐっては、「事実上の松本側の勝利」とする見方と、「疑惑に何ら説明責任を果たしていない」とする批判が真っ二つに割れた。インターネット上では松本のテレビ復帰に反対する署名運動も起き、賛否の議論は収まっていない。お笑い界の第一人者として君臨してきた松本の去就は、日本の芸能界の今後を占う試金石となっている。

文春の報道では、2015年の飲み会に参加した女性たちが、会場でスマートフォンを没収されるなど外部との連絡を断たれた状態だったことも証言された。後輩芸人が女性を集める役割を担っていたとされ、「セックス上納システム」との批判も上がった。松本側は一貫して事実無根を主張して提訴に踏み切ったが、裁判では文春側が多数の証拠や準備書面を提出するなど、長期化は避けられない情勢だった。

活動休止が長期化する中、相方の浜田雅功は単独での活動を継続。「ダウンタウン」としてのコンビ活動は事実上停止状態にある。お笑い界では、松本不在の賞レースや特番のMC人事にも影響が及び、次世代の芸人たちが新たな座を争う構図が生まれている。一方、松本の復帰を求めるファンの声も根強く、賛否の分断は今も続いている。

松本が出演していた番組やCMは、活動休止に伴って内容変更や終了を余儀なくされた。吉本興業は一連の問題を受けてコンプライアンス体制の見直しを進めると表明したが、松本の復帰条件について明確な基準は示されていない。訴訟の取り下げ後も、松本が公の場で疑惑について直接説明する機会は設けられておらず、文春側は「報道の正当性」を主張し続けている。お笑い界の頂点に君臨した人物の去就は、芸能界における性加害疑惑への向き合い方を問う象徴的な事例となっている。

2024年11月の訴え取り下げ発表では、松本側の「お詫び」の表現をめぐっても賛否が分かれた。「不快な思いをされた方がいらっしゃったのであれば」という仮定形の謝罪に対し、「説明責任を果たしていない」との批判が上がる一方、支持者からは「物的証拠がないことを文春に認めさせた」との評価も出た。文春側は一貫して「報道の正当性」を主張し、双方の主張は平行線をたどった。

お笑い界では、松本が長年審査員を務めた賞レースのあり方にも注目が集まった。松本不在の中で新たな審査体制が模索され、世代交代の議論も活発化している。裁判は終結したが、疑惑をめぐる社会の分断は解消されておらず、松本の今後の身の振り方が注目され続けている。