2023年9月30日、宝塚歌劇団宙組の25歳の現役生徒が宝塚市内の自宅マンションから転落死しているのが判明した。自殺を図ったとみられ、初日を迎えたばかりの宙組宝塚大劇場公演は全日程休止となった。遺族側は、亡くなった女性が上級生からヘアアイロンを故意に当てられ火傷を負ったり、「嘘つき野郎」「マインドがないのか」などの暴言を受けていたと訴えた。

2023年11月14日、外部の弁護士による調査チームの調査報告書が発表された。報告書は「強い心理的負荷がかかっていたことは否定できない」としつつ、「いじめやハラスメントは認められなかった」と記載。遺族の代理人弁護士は事実関係の再度検証を求めた。その後、11月22日と12月6日には兵庫労働局西宮労働基準監督署が歌劇団に立ち入り調査を実施。12月5日には宙組東京公演の全日程中止が発表され、12月23日には2000年以降、歌劇団が割増賃金の不払いや労務管理の不備で計4回の是正勧告を受けていたことが発覚した。

2024年2月23日、劇団員死亡問題でパワーハラスメントがあったことを歌劇団側が認め、遺族側に伝えていたことが報じられた。3月28日には阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫代表取締役社長や劇団の村上浩爾理事長らが大阪府内のホテルで会見し、遺族に謝罪するとともに合意書を締結したことを発表。遺族側に謝罪文を出した上級生もいたという。

9月5日には西宮労働基準監督署が歌劇団に対して労働基準法違反で是正勧告を行った。亡くなった劇団員は歌劇団と業務委託契約を結ぶフリーランスの立場だったが、遺族側は実質的に指揮命令下に置かれた労働者と主張。死亡前1カ月の時間外労働は、労災認定基準の「過労死ライン」(月100時間)を大幅に超える277時間に上っていた。元タカラジェンヌの東小雪さんは「『厳しい』ではなく『おかしい』んじゃないかという疑問をずっと持っていた」と語り、劇団の上下関係の構造的問題を指摘。事件は日本の芸能界全体の人権問題として議論を呼んだ。