2023年9月30日、宝塚歌劇団宙組に所属する劇団員の女性(当時25)が死亡した。遺族側は、上級生からのいじめやパワーハラスメントがあったと主張。具体的には、上級生がヘアアイロンを故意に当てて額に1か月以上痕が残る火傷を負わせたことや、「嘘つき野郎」「マインドがないのか」といった暴言を受けていたことなどを訴えた。
歌劇団側は2023年11月、外部調査チームによる調査報告書を公表し、「いじめやハラスメントは確認できなかった」と結論づけた。しかし遺族側の代理人弁護士は事実関係の再検証を求め、元タカラジェンヌの東小雪氏らがテレビ番組で劇団の厳しい上下関係の実態を証言するなど、世論の批判は高まった。
そして2024年3月28日、阪急阪神ホールディングス、阪急電鉄、宝塚歌劇団の3者は遺族と合意書を締結した。合意内容では、劇団が被災者に長時間の活動を余儀なくさせて過重な負担を生じさせたことや、厚生労働省の指針が示す「職場におけるパワーハラスメント」に該当する様々な行為によって多大な心理的負荷を与えたことを認め、経営陣の怠慢によって長年にわたり劇団員に様々な負担を強いる運営を続けてきたことが事態を引き起こしたとして、すべての責任が劇団にあることを認めて謝罪。安全配慮義務違反があったことも認めた。
合意書の調印の席には遺族のほか、角和夫・阪急阪神ホールディングス代表取締役会長グループCEOが出席し、遺族に対して直接謝罪した。解決金として相当額の慰謝料などが支払われることも決まった。劇団側は「同様の被害が二度と生じないよう、健康な職場を作るために全力を尽くす」と約束し、改革への取組みを進めている。
110年以上の歴史を持つ宝塚歌劇団の閉鎖的な体質が白日の下にさらされたこの事件は、日本の芸能・興行界におけるハラスメント問題を考える契機となった。劇団はその後、活動時間の上限設定や相談窓口の整備などの改革を進めているが、遺族やファンの心の傷が癒えるには長い時間がかかるとみられる。