2023年9月30日に宝塚歌劇団宙組の劇団員が死亡した問題で、阪急阪神ホールディングス、阪急電鉄、宝塚歌劇団の三者は2024年3月28日、遺族との合意に達し合意書を締結した。合意内容では、劇団側が被災者に対し長時間の活動を余儀なくさせ過重な負担を生じさせたこと、劇団内において厚生労働省指針が示す「職場におけるパワーハラスメント」に該当する様々な行為を行ったことによって多大な心理的負荷を与えたことを認め、経営陣の怠慢によって長年にわたり劇団員に様々な負担を強いるような運営を続けてきたことが事態を引き起こしたものであって全ての責任が劇団にあることを認め、安全配慮義務違反があったことを認めて謝罪した。

合意書の調印の席には双方代理人のほか遺族、角和夫阪急阪神ホールディングス代表取締役会長グループCEOが出席し、角会長は本件について遺族に対して謝罪した。合意内容には、阪急・劇団が本件と同様の被害が二度と生じないよう健康な職場を作るために全力を尽くすこと、遺族に対し慰謝料等解決金として相当額の金員を支払うことなどが盛り込まれた。

合意書でパワハラとされた具体的な行為には、2021年8月14日に宙組上級生が被災者の額に1カ月を超えて痕が残るほどのヘアアイロンによる火傷を負わせたことなどが含まれる。劇団は当初パワハラを否定していたが、遺族側との協議を経て組織運営の問題を認めるに至った。

宝塚歌劇団は110年を超える歴史を持つ日本を代表するエンターテインメント集団で、上級生と下級生の厳格な序列や、稽古・本公演を通じた濃密な集団生活が特徴とされてきた。今回の問題は、そうした伝統的な組織文化そのものにメスが入る契機となった。

合意から3年が経過した現在も、劇団の改革の実効性を問う声は絶えない。「劇団自身が経営陣の怠慢や安全配慮義務違反を認めた以上、変わったという事実だけで全てが解決したとは言えない」と指摘する関係者もおり、宝塚歌劇団が向き合うべき過去と現在を巡る議論は続いている。

劇団は公演体制の見直しや相談窓口の整備など改革を進めているとしているが、ファンや関係者からは「上級生・下級生の序列文化そのものの見直しが必要」との声も根強い。伝統と改革の両立が、宝塚歌劇団の大きな課題となっている。