宝塚歌劇団の宙組に所属していた25歳の劇団員が2023年9月30日に死亡した問題は、宝塚歌劇団の組織体質を問う大きな社会問題へと発展した。遺族側はパワハラやいじめがあったと主張し、歌劇団側との間で対立が続いた。

2023年11月14日、宝塚歌劇団側の外部調査チームによる調査報告書が公表された。焦点になったのはパワハラ・いじめについてだったが、報告書は上級生からのいじめやハラスメントは確認できなかったと結論づけた。一方で、亡くなった劇団員が親しいメンバーに対し「上級生についていけない、叱られるのが嫌だ」と述べ、家族に対して「とにかくずっと怒られているから、何で怒られているのか分からない」と語っていた事実は確認できたとした。

遺族側が訴えていた内容は深刻だった。遺族側によれば、亡くなった劇団員は上級生からヘアアイロンを故意に当てられ火傷を負ったり、「嘘つき野郎」「マインドがないのか」などの暴言を受けていたという。遺族の代理人弁護士は事実関係を再度検証し直すべきだと主張し、元タカラジェンヌの東小雪さんも「これは“厳しい”ではなく、“おかしい”んじゃないか」という疑問をずっと持っていたと、劇団の内情を明かした。

2024年2月27日、遺族側代理人が記者会見を開き、歌劇団側はこの時点で一部がパワハラに該当する行為だったことを認めた。そして2024年3月、劇団側は遺族との合意に至り、長時間の活動による過重な負担、パワーハラスメントに該当する行為、経営陣の怠慢、安全配慮義務違反などを認めた。つまり劇団自身が、問題の根底に組織運営の問題があったことを認めたのである。

宝塚歌劇団はその後、改革に取り組んできた。事件から3年が経った今も、宙組は本当に変わったのかという問いは残っている。上級生と下級生という明確な序列がある特殊な組織の中で、若い組子を守る仕組みが機能するのか。公演を成立させ、チケットを売ることだけが劇団経営ではない。舞台に立つ人間を守るところまで含めて劇団運営であることが、改めて突きつけられた事件だった。