2023年7月、中古車販売大手ビッグモーターが自動車保険金の不正請求を認めた。2021年秋の社員の内部通報で「上長の指示で修理代を実費より高くして保険会社に水増し請求している」ことが判明。1件あたり14万円前後の利益を乗せることがノルマとして課されていた。7月18日には第三者委員会の調査報告書が公開され、7月25日の会見で兼重宏行社長と息子の兼重宏一副社長の辞任が発表された。新社長には専務の和泉伸二氏が就任した。

関係者への取材によれば、過去5年間だけでも水増し請求を含めた各種の不正請求は複数社の合計で100億円近くに上るとされ、損保各社が気づかないはずはないと指摘された。背景には損保とビッグモーターの「共犯関係」があった。損保は不正請求を黙認する代わりに、事故車の入庫誘導1件につき自賠責保険5件(損保によっては7件)をビッグモーターと契約する密約があったという。事故受付センターで「ビッグモーターの店舗はいかがでしょうか」と提案し、了承されるとレッカーで事故車を運び込む仕組みだった。

さらに店舗周辺の街路樹に除草剤を撒いたり、伐採したりしていた問題も発覚。東京都は店舗近くの土壌調査で除草剤成分を検出し、警視庁は2023年9月に都内9店舗を一斉捜索した。2024年1月30日には神奈川県警が環境整備推進委員だった社員を器物損壊の疑いで逮捕。2月1日には指示で伐採を手伝った社員2人も書類送検された。

損保側にも責任が波及した。ビッグモーターと密接な関係にあったとされる損害保険ジャパンは2024年1月16日に外部調査委員会の最終報告書を公表。金融庁から1月25日に業務改善命令を受け、翌26日の会見で白川儀一社長が辞任を表明した。1月30日には持ち株会社SOMPOホールディングスの櫻田謙悟会長兼CEOの辞任も発表された。売上高7000億円を誇った巨大企業の崩壊は、組織的な不正と業界の癒着を白日の下にさらした。