中古車販売大手ビッグモーターの保険金不正請求問題で、同社は2023年7月25日に初めて記者会見を開き、兼重宏行社長と、その息子で副社長の兼重宏一氏の辞任を発表した。問題の発端は2021年秋、社員の内部通報により「上長の指示で本来の自動車の修理代を実費より高くして、その費用を保険会社に水増し請求している」ことが判明したことだった。同社は2023年7月5日に保険金不正請求を認め、同月18日には第三者委員会による調査報告書の全文が公開された。

報道によると、過去5年間だけでも水増し請求を含めた各種の不正請求分は複数社の合計で100億円近くに上るとされ、損保各社は水増し請求分の返還を要求。ビッグモーターは返還を始めている。一方で、現場では損保側が不正請求であることにうすうす気づきながらも厳しく取り締まらなかった実態も判明し、「共犯関係」の構造が問題視された。

不正請求の背景には、14万円前後の利益を乗せることがノルマとして課されていた過酷な営業体制があったとされる。さらに、損保各社が事故車の「入庫誘導」の見返りにビッグモーターから自賠責保険の契約を獲得する密約があったことも明らかになり、業界全体の癒着構造に批判が集まった。損保ジャパンは2024年1月25日、金融庁から保険業法に基づく業務改善命令を受けた。

全国の店舗周辺で街路樹が枯れたり伐採されたりする被害の表面化も相次ぎ、ビッグモーターの業績は悪化。2024年5月1日、伊藤忠商事と国内投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ、伊藤忠エネクスの3社連合が600億円を拠出し、主要事業を引き継いだ新会社「WECARS」(ウィーカーズ)が発足した。約250の店舗と約5000人の従業員は新会社が引き継ぎ、創業者の兼重宏行前社長らは経営に関与しない体制となった。

保険金不正請求事件は、中古車業界の不透明な商慣習にメスを入れる契機となり、損保業界の代理店管理の在り方も問われる事態となった。

新会社WECARSの下で事業は継続されているが、中古車業界全体の体質改善にはなお時間がかかるとみられる。損保各社も代理店管理の強化を迫られており、業界の構造改革は道半ばだ。