産業ガス大手のエア・ウォーターは、グループ37社で損失計上の先送りなどの不適切な会計処理が行われ、2020年度以降の営業利益が計209億円多く計上されていたと発表した。特別調査委員会は、経営トップやマネジメント層の関与も認めた。
同社は産業ガスで国内有数の規模を持ち、医療や食品など幅広い分野に事業を広げてきた。ところが調査では、在庫の評価や売上計上の時期を操作するなど、複数の手法で利益を実態より良く見せる処理がグループ全体に広がっていたことが分かった。決算発表は遅れ、中間決算では最終赤字に転落した。
報告書は、業績目標の達成を求める強い圧力や、トップダウンの指揮命令、人事権の集中が不正の背景にあったと指摘した。内部監査部門の責任者が不適切な処理に関与していた点も重く見られ、チェック機能が働かなかった実態が浮き彫りになった。
会社は再発防止策を公表し、役員の報酬減額などの処分やガバナンス体制の見直しを進めた。日本を代表する素材メーカーで起きた組織的な会計不正は、投資家の信頼を揺らし、企業統治の実効性をめぐる議論を再び呼んでいる。
不適切会計は一部の現場の判断で始まっても、目標管理や人事評価の仕組みと結びつくことで組織全体に広がりやすい。エア・ウォーターの事例は、監査部門の独立性をどう守るかという、すべての上場企業に共通する問いを投げかけている。