エアバッグのインフレータ(ガス発生装置)が異常破裂し金属片をまき散らす欠陥を抱えながら出荷を続けたタカタは、世界規模のリコール費用に耐えきれず2017年に経営破綻した。負債総額は1兆円を超え、関連死者は世界で数十人にのぼり、今なお未回収の車両が走り続けている。

欠陥の核心は、エアバッグを膨らませる火薬の代わりに使われた硝酸アンモニウムだった。乾燥剤を入れていない製品が高温多湿の環境に長時間さらされると劣化し、衝突時にインフレータが異常破裂して金属片が飛散する。2004年以降に事故の報告が相次ぎ、2008年11月にホンダが米国で、日本では2009年7月に最初のリコールに踏み切った。その後も事故が起こるたびに対象が拡大し、日米欧の自動車メーカー15社以上に供給していた世界シェア2割の巨大サプライヤーゆえに、リコールは前例のない規模に膨れ上がった。タカタは当初欠陥の存在を否定し、事実の隠蔽も指摘された。

2015年5月、タカタは欠陥の存在を認め、米運輸省と全米規模のリコールで合意。対象は3400万台近くに達した。2017年1月には刑事責任を認め、米司法省と最大10億ドル(約1150億円)の和解金支払いで合意した。そして2017年6月26日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。米子会社も連邦破産法11条を申請した。負債総額は約1兆7000億円とされ、製造業としては戦後最大の倒産となった。事業は中国・寧波均勝電子傘下のKey Safety Systems(現Joyson Safety Systems)に約16億ドルで譲渡された。

リコール対象は世界で累計1億2500万台規模に膨らみ、関連する死者は2017年時点で少なくとも16人とされたが、その後も増え続け世界で40人を超えるとの報道もある。2025年6月にはフランスで女性運転者がエアバッグの金属片で死亡する事故が発生し、仏政府はタカタ製エアバッグ搭載車250万台のリコールと170万台の運行禁止に踏み切った。「殺人エアバッグ」の汚名は、破綻から10年近くたった今も消えていない。

タカタは1933年創業の老舗部品メーカーで、1987年にはホンダと共同で日本初のエアバッグ搭載車を開発した。世界シェア2割を誇る巨大サプライヤーだったが、欠陥を把握しながら出荷を続けたことが批判された。2017年6月26日の記者会見で高田重久会長兼社長は深々と頭を下げ、民事再生法の適用申請を発表した。

リコール費用の多くはホンダやトヨタなどの自動車メーカーが負担した。日本国内では2009年以降、24社から延べ134件のリコールが実施され、累計1883万台が対象となった(2017年7月時点)。それでも未改修の車両は残り、北米ではフォードやマツダが対象車に「運転するな」と警告する事態に。2025年6月にはフランス東部ランスで女性運転者がエアバッグの金属片で死亡し、仏政府が250万台のリコールと170万台の運行禁止に踏み切った。破綻から10年近くを経ても、タカタ製エアバッグの脅威は完全には去っていない。

タカタとホンダは1987年の共同開発以来の深い関係にあり、リコール費用の多くをホンダをはじめとする自動車メーカー各社が負担した。トヨタ、日産、マツダ、BMWなど日米欧のメーカーが次々とリコールに踏み切り、対象は世界で1億2500万台規模に膨らんだ。自動車業界全体で数兆円規模の費用が発生したとされる。

破綻後、タカタの事業はJoyson Safety Systemsに引き継がれ、エアバッグの生産とリコール対応は継続された。ただ、製造から20年以上が経過した車両も多く、インフレータの劣化リスクは時間とともに高まる。未改修のまま走り続ける車両の所有者にいかにリコールを受けてもらうかが、今なお世界共通の課題となっている。

タカタ製エアバッグをめぐっては、世界各地で集団訴訟も相次いだ。米司法省との和解では最大10億ドルの支払いが命じられ、被害者への補償基金の設立も進められた。ただ、補償の対象や範囲をめぐっては今も争いが続いている国もある。

2025年6月のフランスでの死亡事故を受け、仏政府はタカタ製エアバッグ搭載車250万台のリコールと170万台の運行禁止に踏み切った。対象メーカーのステランティスは修理の加速を表明したが、未改修の車両はなお多い。製造から20年以上が経過した車両のインフレータは劣化が進んでおり、時間との闘いが続いている。