2024年末に週刊誌が報じた中居正広と女性のトラブルは、フジテレビの第三者委員会が「性暴力」と認定する事態に発展し、2025年1月、中居は芸能活動からの引退を発表した。スポンサーのCM見合わせが相次ぎ、フジテレビの会長・社長が辞任するなど、テレビ業界全体を揺るがす騒動となった。

発端は2023年6月2日、フジテレビの編成幹部の設定した会食の席だった。会食には中居正広と当時フジテレビのアナウンサーだった女性Aが出席し、結果的に二人が二人きりになる状況が生まれた。フジテレビが設置した第三者委員会は2025年3月31日に公表した調査報告書で、この件を「フジテレビの有力取引先である有名タレントによる女性Aに対する性暴力、人権侵害行為」と認定した。報告書は、取引先の関係であっても「取引先から社員に対する人権侵害」であり、カスタマーハラスメントにあたると結論づけた。

中居側は2023年7月、編成幹部を通じて女性Aに100万円の「見舞金」を渡そうとしたが、女性Aは受け取らなかった。主治医から中居との連絡遮断が回復に必要との見解が示され、女性Aは連絡の差し控えを求めたが、中居側はその後も一方的にショートメールを送り続けたという。2023年11月に女性Aの代理人弁護士から内容証明郵便が届き、2024年1月7日に示談が成立した。示談後も中居は番組出演を続けていたが、2024年8月には司会を務める「だれかtoなかい」の終了が内々に決まった。

2024年12月19日発売の「女性セブン」、同月26日発売の「週刊文春」がこのトラブルを報じ、問題は一気に表面化した。フジテレビは2025年1月17日に記者会見を開いたが、カメラ撮影を認めないなどの対応に批判が殺到。1月20日までに75社を超えるスポンサー企業がCMの放送を見合わせる事態となった。1月23日、中居は公式サイトで「本日をもって芸能活動を引退いたします」と発表。「全責任は私個人にあります」「37年間、ありがとうございました」と記し、個人事務所の廃業も明らかにした。1月27日にはフジテレビの嘉納修治会長と港浩一社長が辞任し、清水賢治氏が新社長に就任した。

第三者委員会の報告書公表後も波紋は続いた。2025年7月にフジテレビが放送した自己検証番組では、当時の幹部らが初期対応の不備を認めて謝罪した。SMAPの元メンバーとして国民的知名度を誇った中居の引退は、日本の芸能界とテレビ業界の体質に根本的な問いを投げかける事件となった。

第三者委員会の報告書は、フジテレビの組織的な問題にも踏み込んだ。編成幹部が中居と女性Aの会食をセッティングした経緯や、トラブル発覚後に幹部間で「口外するな」との指示が飛び交ったこと、女性Aが2024年に退職に追い込まれたことなどが認定された。中居は第三者委員会のヒアリング要請に対し、守秘義務を理由に解除に応じなかったことも明らかにされた。

フジテレビは清水賢治新社長のもと、コンプライアンス体制の刷新や再発防止策の策定を進めると表明。2025年7月に放送した自己検証番組では、当時の港浩一社長や大多亮常務らが「女性の気持ちに寄り添い切れなかった」と謝罪した。スポンサー企業の多くはCM出稿を段階的に再開しているが、視聴者の信頼回復にはなお時間がかかるとみられている。

被害女性Aは2024年にフジテレビを退職し、その後の動向が報じられている。中居のレギュラー番組はTBS、日本テレビ、テレビ朝日などで次々と終了・降板となり、30年以上にわたって第一線で活躍した国民的タレントの番組が一斉に姿を消した。各局は出演者との契約やハラスメント防止のガイドラインを見直す動きを広げており、中居・フジテレビ問題はテレビ業界全体のコンプライアンス改革を促す契機となった。

事件を受けて、民放各局はタレントとの契約や番組制作の現場におけるハラスメント防止策の見直しに乗り出した。スポンサー企業の間でも、広告出稿先の人権デューデリジェンスを強化する動きが広がっている。中居は引退後、公の場に姿を見せておらず、その動向は伝えられていない。37年間にわたって第一線で活躍した国民的タレントの突然の引退は、芸能界とテレビ業界の構造的な問題を浮き彫りにした事件として、今後も語り継がれていくだろう。