大王製紙の創業家出身で42歳の若さで会長に就いた井川意高が、シンガポールやマカオのカジノでのバカラにのめり込み、子会社から100億円超を不正に借り入れた事件。2011年の発覚から逮捕、懲役4年の実刑判決へと転落した「カジノ王」の末路は日本社会に衝撃を与えた。

井川は大王製紙創業者の孫で、東京大学法学部を卒業したエリートだった。2011年6月に会長に就任した直後、同年9月に子会社7社からの巨額借入が発覚した。マリーナベイ・サンズ(シンガポール)、ギャラクシーマカオ、ウィン・マカオのカジノでバカラに興じ、借金の返済とさらなる賭け金のために、2010年度に約23億5000万円、2011年4月からの半年間だけで約60億円を子会社から個人的に借り入れていた。借入総額は106億円に上るとの報道もある。

大王製紙は井川を刑事告発する方針を固め、同年11月21日に子会社7社から合計85億8000万円を不正に借り入れたとして告発。翌22日、井川は会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕された。2012年10月10日、東京地裁は懲役4年の実刑判決を言い渡し、2013年6月26日に最高裁が上告を棄却して実刑が確定した。

2016年12月14日に仮釈放され、2017年6月に刑期を満了した。出所後は著書の出版やYouTube、オンラインサロンなどで活動し、ギャンブル依存症だったことを公言している。2023年には韓国のカジノでバカラに興じる姿が報じられ、再び話題となった。一代で築いた名門企業の御曹司がカジノで全てを失った事件は、創業家経営のガバナンス不全を象徴する出来事として今も語られる。

井川は創業家の三代目として期待を背負い、東京大学法学部卒業後に大王製紙に入社。2011年4月に42歳の若さで社長に就任し、6月には会長に退いた。事件発覚後、大王製紙は王子製紙との経営統合構想を模索したが、創業家の反対などで断念した。名門企業の御曹司による巨額不正は、創業家経営のガバナンス不全を象徴する事件として経済界に衝撃を与えた。

出所後の井川は著書の出版やYouTubeチャンネル、オンラインサロンの運営などで発信を続け、「カジノで106億円を失った男」としてメディアに登場することも多い。2025年にはX(旧ツイッター)での投稿をめぐり、参議院議員に対する名誉毀損で55万円の支払いを命じる判決も受けた。ギャンブル依存症からの回復を公言しながらも、カジノとの縁は切れていない。

井川は収監生活中に手記を執筆し、出所後に出版。ギャンブル依存症の実態や創業家に生まれた重圧を赤裸々に綴った内容が話題を呼んだ。YouTubeやオンラインサロンでは経済や経営を語る発信者として一定の支持を集めているが、2023年に韓国・ソウルのカジノでバカラに興じる姿が週刊誌に報じられ、「依存症は治っていない」との批判も浴びた。

事件は、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致議論が進む日本で、ギャンブル依存症対策の必要性を改めて浮き彫りにした。国は2018年にギャンブル等依存症対策基本法を成立させ、対策を強化している。名門企業の御曹司が100億円超をカジノで失った事件は、依存症の恐ろしさを象徴する事例として今も語られる。

井川は出所後、経営者や投資家向けの講演活動も行い、自身の経験を「反面教師」として語っている。オンラインサロンでは経済や歴史をテーマにした発信を続け、一定の支持層を持つ。一方で、2023年の韓国カジノでの賭博報道や、SNSでの過激な発言による名誉毀損判決など、物議を醸すことも少なくない。

大王製紙は事件後、創業家の影響力低下が進み、コーポレートガバナンスの強化を迫られた。製紙業界ではその後も再編が進み、井川事件はオーナー企業における内部統制の重要性を示す事例として、経済誌などで繰り返し取り上げられている。