ZOZO創業者の前澤友作が2018年に発表した民間人初の月周回プロジェクト「dearMoon」は、スペースXの宇宙船スターシップの開発遅延を理由に2024年6月1日に中止が発表された。世界が注目した夢の月旅行計画は、実現することなく幕を閉じた。

dearMoonは、2018年9月に前澤友作が構想・出資を発表した月旅行ミッション兼アートプロジェクトだ。前澤友作自身のほか、世界中から公募で選ばれたアーティストらが、スペースXの宇宙船スターシップで月を周回して地球に帰還する計画だった。ミッションの費用は1000億円規模と推測され、前澤友作が全額を負担するとされていた。

2022年12月にはDJのスティーブ・アオキやBIGBANGのT.O.P(チェ・スンヒョン)ら8人のクルーが発表され、大きな話題を呼んだ。アーティストたちが宇宙で創作活動を行うという前例のないプロジェクトとして、世界中から注目を集めた。

打ち上げは当初2023年内が予定されていたが、スターシップは無人での飛行試験が続く段階で、期間内の実現は困難な状況だった。前澤友作は中止の理由について「2023年内にローンチすることは叶わず、また近い将来における実現の見通しも不明瞭である」とし、「このままでは僕自身の人生計画が立てられない」と述べた。

スターシップの開発はその後も続けられており、無人飛行試験を重ねている。前澤友作は月旅行とは別の形での宇宙への関わりも示唆しており、次の挑戦に注目が集まっている。民間宇宙ビジネスの現実と夢の距離を示したプロジェクトとして、dearMoonの記憶は残り続けるだろう。

中止の背景には、スターシップがNASAのアルテミス計画の月着陸船に選定されたことでdearMoonの優先度が下がったことや、前澤友作が2021年にソユーズMS-20で国際宇宙ステーションへの宇宙旅行をすでに実現していたことなどがあると報じられている。民間宇宙旅行の象徴的プロジェクトの中止は、宇宙ビジネスの現実の厳しさを浮き彫りにした。