2021年の全仏オープンで、女子テニスの大坂なおみが試合後の記者会見を拒否して罰金を科された末、2回戦の棄権を表明。自身が2018年からうつ病に苦しんできたことを告白し、アスリートのメンタルヘルスをめぐる世界的な議論のきっかけとなった。
2021年5月26日、大坂は全仏オープン開幕を前に、大会期間中の試合後記者会見には応じないとSNSで宣言した。理由は「アスリートのメンタルヘルスが軽視されている」というものだった。5月30日の1回戦に勝利した後、宣言通り会見を欠席すると、大会主催者は1万5000ドル(約165万円)の罰金を科し、メディア対応を拒否し続ければ失格や今後の大会からの出場停止もあり得ると警告。4大大会の主催者による共同声明も出される異例の事態となった。
翌5月31日、大坂は2回戦の棄権を表明し、「2018年の全米オープン以降、長いうつに苦しんできた」と告白した。自身は内向的で、メディアの前で話す前に強い不安に襲われると説明。「メンタルヘルスを軽んじるつもりは決してない」とも記した。この告白に、女子テニスのレジェンドであるビリー・ジーン・キングは「信じられないほど勇敢だ」と、マルチナ・ナブラチロワらも支持のメッセージを寄せた。一方で、メディア対応は選手の契約上の義務だとして、大坂の手法を批判する声も上がった。
大坂はその後も精神的な不調が続き、同年8月の全米オープン3回戦敗退後には長期の休養に入った。2023年7月に第1子を出産し、2024年にツアーに復帰。グランドスラム4勝(全豪オープン2勝、全米オープン2勝)を誇る元世界ランキング1位の告白は、スポーツ界におけるメンタルヘルスへの理解を大きく前進させる転機となった。
大坂の告白文では、2018年の全米オープン決勝でセリーナ・ウィリアムズを破って初優勝した際、観客のブーイングの中で表彰式に臨んだ経験にも触れられていた。内向的な性格で、メディアの前で話す前に強い不安に襲われると率直に綴った文章は、多くのアスリートの共感を呼んだ。スポンサー企業各社も大坂への支持を表明した。
大坂は2021年8月の全米オープン3回戦敗退後に長期休養に入り、約半年間ツアーを離れた。2023年7月に第1子を出産し、2024年にツアーへ復帰。母親として、そしてメンタルヘルスの啓発者としての新たな役割も担いながら、グランドスラム5勝目を目指して戦い続けている。
復帰後の大坂は2024年の全仏オープンで当時の世界1位イガ・シフィオンテクと1回戦で激闘を演じるなど、トップレベルへの返り咲きを印象づけた。母親としての生活とツアーの両立という新たな挑戦の中、成績の波はあるものの、四大大会での上位進出を狙える位置に戻りつつある。
大坂の告白は他の競技にも波及した。体操のシモーネ・バイルスが東京五輪でメンタルヘルスを理由に種目を棄権するなど、トップアスリートが心の健康を公に語る流れが加速。スポーツ界の「心のケア」への投資も広がり、大坂はその先駆者の一人として位置づけられている。
2024年の全仏オープン1回戦では、当時の世界1位イガ・シフィオンテクと対戦。マッチポイントを握りながら逆転負けを喫したが、トップ選手と互角に渡り合えることを証明した。母親としての生活とツアーの両立という新たな挑戦の中、成績には波があるものの、四大大会での上位進出を狙える位置に戻りつつある。
大坂の告白以降、スポーツ界ではメンタルヘルスへの投資が広がった。各競技団体が選手の心のケアのための専門家配置を進め、スポンサー企業も選手のウェルビーイングを重視する姿勢を打ち出している。大坂は自身の経験を語る活動も続け、アスリートのメンタルヘルス啓発の象徴的存在となっている。