2018年1月、仮想通貨取引所コインチェックから暗号資産NEM約5億2300万XEM(当時約580億円相当)が不正流出した。ずさんな管理体制が批判され、金融庁の業務改善命令、マネックスグループ傘下入りへと発展。流出NEMの換金に関わった30人が逮捕されたが、実行犯の特定には至っていない。
2018年1月26日未明、コインチェックのウォレットからNEMが外部アドレスへ不正に送金された。同社は記者会見で被害額が580億円相当にのぼると発表し、全ての取扱通貨の出金を停止した。原因は、NEMをインターネットに接続されたホットウォレットで管理し、複数の署名を必要とするマルチシグを導入していなかったことなど、ずさんな管理体制にあった。顧客は約26万人にのぼった。
1月29日、金融庁はコインチェックに業務改善命令を出した。コインチェックは自己資金により、約88.549円/XEMで計算した約463億円の補償を実施すると発表。2018年4月にはマネックスグループが36億円で買収し、完全子会社化された。経営陣も刷新され、創業者の和田晃一良社長らは退任した。
警視庁などの捜査では、盗まれたNEMをダークウェブ上の闇取引所で他の仮想通貨と交換し、国内外の取引所で現金化していたグループの摘発が進んだ。2021年3月までに日本人30人が逮捕・書類送検されたが、ハッキングそのものの実行犯の特定には至らず、時効をにらんだ捜査が続けられた。事件は2014年のマウントゴックス破綻に続く国内仮想通貨業界の大スキャンダルとなり、改正資金決済法による交換業者への規制強化を加速させるきっかけとなった。
コインチェックは2014年設立の新興取引所で、派手なテレビCMで一気に知名度を上げていた。2018年1月26日の緊急記者会見では和田晃一良社長と大塚雄介COOが深々と頭を下げたが、ずさんな管理体制への批判は収まらなかった。補償は1XEM=88.549円で計算され、総額約463億円が2018年3月から顧客に返金された。
2018年4月、マネックスグループが36億円で買収して完全子会社化。経営陣を刷新し、セキュリティ体制を立て直した。その後、コインチェックは業容を回復させ、持ち株会社のCoincheck Groupは2024年12月に米ナスダック市場に上場を果たした。盗難NEMの換金をめぐっては2021年3月までに日本人30人が逮捕・書類送検されたが、ハッキングの実行犯の特定には至っていない。
金融庁は事件後にコインチェックへ複数回の業務改善命令を出し、経営管理体制やセキュリティの抜本的な見直しを求めた。事件を機に、登録審査中の「みなし業者」への規制が厳格化され、交換業者の登録審査は大幅に厳しくなった。仮想通貨交換業を取り巻く法規制は、資金決済法の改正を重ねて強化されていった。
マネックス傘下での再建後、コインチェックは2019年1月に交換業者としての正式登録を取得。セキュリティ投資を重ねて信頼回復を図り、国内大手の一角としての地位を取り戻した。持ち株会社の米ナスダック上場は、事件からの完全復活を象徴する出来事となったが、業界では「事件を風化させてはならない」との声も根強い。
コインチェックの持ち株会社であるCoincheck Groupは2024年12月に米ナスダック市場に上場を果たし、日本の暗号資産交換業者として初の米上場を達成した。上場時の時価総額は10億ドル超と報じられ、事件からの復活を印象づけた。国内では販売所・取引所としての業容を拡大し、NFTマーケットプレイスなどの新規事業にも取り組んでいる。
ただ、580億円流出事件の実行犯はいまだ特定されておらず、警視庁の捜査は時効との闘いとなった。業界関係者は「事件の教訓を風化させてはならない」と口をそろえる。コインチェック事件は、日本の暗号資産業界のセキュリティ意識を一変させた転機として記憶されている。