日本人を狙った特殊詐欺で奪われた巨額の資金が、海外で洗浄された後に日本の高級不動産を買う原資として戻ってくる——そんな実態を追った報道が注目を集めている。中心にいるのは、カンボジアで特殊詐欺組織を運営し「特殊詐欺の帝王」と呼ばれた陳志(チェン・ジー)だ。
陳は中国・福建省の漁村出身で、2011年ごろに拠点をカンボジアに移し、フン・セン前首相の庇護を受けながら「園区(パーク)」と呼ばれる大型詐欺団地を運営。ロマンス詐欺を筆頭に世界各国を相手に特殊詐欺を働き、英タイムズは資産規模を約600億ドル(約9兆円)と推定した。2026年2月、米当局の捜査で摘発され、2兆円以上の財産を没収された。
犯罪収益を原資に、陳はプリンスグループの看板で不動産、金融、銀行、航空会社などを経営する表の顔も持っていた。日本にも関連法人が複数あり、詐欺で得た資金の受け皿として不動産を買い漁っていたとされる。東京・港区北青山の15部屋のみの超高級マンション(坪2000万円とも言われる)も陳の名義だったという。
陳の逮捕後、カンボジアでは詐欺拠点の大規模な摘発と移動が始まり、蓄財した幹部らが国外逃亡を図っている。在住中国人が使うテレグラムにはプライベートジェットでの逃走ルートを斡旋する広告も出回り、逃亡先として日本を選ぶ者もいるとされる。日本は犯罪収益を「安全な資産」に置き換える格好の市場として狙われている実態が浮かび上がっている。