歌舞伎俳優の市川猿之助被告は2023年5月18日、東京・目黒区の自宅で両親とともに倒れているのが見つかり、両親が死亡、自身は一命を取り留めた。歌舞伎界のスターを襲った一家心中事件は、日本中に衝撃を与えた。

発見時、母親はその場で、父親の段四郎さんは病院搬送後に死亡が確認された。司法解剖の結果、両親は向精神薬中毒で死亡した疑いがあることが判明。自宅からは市川猿之助被告が書いたとみられる遺書のようなものも見つかり、警視庁は心中を図った可能性があるとみて捜査を進めた。

市川猿之助被告は任意の聴取に対し、両親と心中を図ったという趣旨の説明をしたとされる。背景には、週刊誌によるハラスメント報道があったとされ、報道を苦にした末の犯行だったとみられている。週刊誌報道と一家心中という構図は、報道のあり方をめぐる議論も呼び起こした。

2023年6月27日、市川猿之助被告は母親に対する自殺幇助容疑で逮捕され、7月18日には父親に対する容疑でも再逮捕された。同月28日に起訴され、10月20日の初公判で起訴事実を認めた。検察側は懲役3年を求刑し、11月17日に東京地裁は懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。判決は11月20日に確定している。

歌舞伎界では、市川猿之助被告の不在が大きな空白となった。澤瀉屋を牽引してきたスターの退場は、興行面でも影響が大きく、代役の起用や演目の見直しが迫られた。週刊誌報道をきっかけとした一家心中という構図は、報道被害をめぐる議論にも一石を投じ、メディアの責任を問う声も上がった。

市川猿之助被告は澤瀉屋を背負う歌舞伎界の第一人者で、テレビドラマ「半沢直樹」などでも活躍するスターだった。事件により所属事務所との契約は終了し、出演予定だった作品にも大きな影響が出た。歌舞伎界への復帰の道は閉ざされ、芸能界とメディアの関係を問い直すきっかけともなった事件として、今も語り継がれている。